さまざまなタイプの介護施設
特別養護老人ホーム、ケアハウス、有料老人ホームなど、高齢者向けの施設、介護施設にはいくつもにはさまざまなタイプ、種類があります。
初めての方には似たような言葉に馴染みもなく、どう違うのかとまどうこと必至です。しかも民間運営の施設と公的施設、福祉施設があり、費用も違えば、受けられるサービスにも違いもあります。
発症すると緊急を要する場合が大半なので、本当は選べるにもかかわらず、事実上「選ぶ権利」がない状態に追い込まれ、場合によっては高額な費用に苛まれることも少なくありません。
前もって知識を持っていることが患者の心理的な負担を軽減し、家計を救うことになるので、予め整理しておきましょう。
民間、公営、それぞれにいくつかの形態があります。
数字は厚生労働省が発表している施設の数です。
民間運営
有料老人ホーム
- 介護付有料老人ホーム 4,064
- 住宅型有料老人ホーム 5,623
- 健康型有料老人ホーム 16
その他の施設
- サービス付き高齢者向け住宅 6,668
- グループホーム 11,678
公的施設
介護保険施設
- 特別養護老人ホーム 7,631
- 介護老人保健施設 4,222
- 介護療養型医療施設 1,215
福祉施設
- ケアハウス 636
- 養護老人ホーム 953
出典:厚生労働省 2017年7月13日更新
老人ホーム・介護施設の種類と違いの比較
高齢者介護施設を大別すると、有料老人ホームをはじめサービス付き高齢者向け住宅などの民間が運営する施設と、特養・老健などの介護保険施設に分けられます。
それぞれの特徴は以下の通りで、利用対象者や目的・役割がそれぞれ異なります。
まずは要介護と費用が判断基準に
民間施設ではサービス付き高齢者向け住宅が増加中!
有料老人ホーム(9,703件) |
サービス付き高齢者向け住宅(6,668件) |
グループホーム(11,678件) |
特別養護老人ホーム(7,631件) |
介護老人保健施設(4,222件) |
介護療養型医療施設(1,215件) |
ケアハウス(636件) |
養護老人ホーム(953件) |
グループホームは小規模で開設コストを低額に抑えられるメリットから棟数が増えています。
その他では有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、特別養護老人ホームの多さが目につきます。特に最近はサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)が増加しています。
これは、「特別養護老人ホーム」は待機者が多くてなかなか入居できないという人が多いことが影響しています。また国はコストを圧縮するために公的な施設の増加は少なく、その分民間施設が増えていることも関係しています。
有料老人ホーム・介護施設の種類と特徴
民間施設ではサービス付き高齢者向け住宅が増加中!
高齢者や要介護者を対象にした介護施設や高齢者住宅は種類が多く、サービス内容や目的、費用や料金、入居条件なども施設によってさまざまです。
ホームの数だけを見ればグループホームが多いということがわかりますが、その他、民間の施設では住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅が多いということがわかります。
介護施設の数が多いということは選択の幅が広いということでもあり、入居を検討している方にとってはより良い、より理想に叶った施設選びの状況が整っていると言えるでしょう。
介護付き有料老人ホーム
- 特徴
-
- 本格的な介護や生活支援にはじまり、広範なサービスを入居者の状態に合わせて提供します。
- スタッフは24時間常駐しています。
- 「介護専用型」「混合型」の2種類があります。
-
介護専用型 要介護度1~5までが対象。 混合型 自立可能な高齢者から要介護度5まで、認知症も含めて幅広い受け入れに対応。ただし、中には自立状態の高齢者しか入れない例も(事前に要確認)。 - 費用
- 入居一時金と月額使用料を支払う。安価なものから高額なものまで、施設ごとの差が激しい。
- 介護保険の適用可否
- 適用可能。入居者の負担額は原則1割だが、所得によっては2割負担となります。
- 医療保険の適用可否
- 不可。
介護付有料老人ホームについて詳しくする
住宅型有料老人ホーム
- 特徴
-
- 自立している方から要支援・要介護の方まで幅広く入居が可能です。
- 「ある程度、身体の自由が利く人が入るところ」というイメージが強いものの、要介護度が進んだ方が目立つ施設も実際には多数あります。
- サービスは、生活支援や、提携する医療機関が主導する健康管理等が中心。
- 介護スタッフが常駐していないので、介護サービスは外にある事業者(訪問介護や通所介護等)に依頼することになります。(※費用は別料金)
- 費用
- 月額使用料は10~30万円くらいが相場。
入居金は、ゼロのところから1000万円を超えるところまでさまざまです。 - 介護保険の適用可否
- 施設内では不可だが、外部の在宅サービスを受ける際は介護保険を利用できます。
- 医療保険の適用可否
- 不可。
健康型有料老人ホーム
- 特徴
-
- 健康な生活を営みたい方のためにつくられた施設。ジムや温泉といった、健康維持のために欠かせない設備とバリアフリー設備が充実。
- 基本的に、自立できる高齢者しか入居できない(食事のサービスはつくが、介護は原則なし)。認知症の発症者の受け入れもNG。
- 基本的には、介護が必要になった場合には退去しなければならない。
- 費用
- 多様な設備がついているため高め。入居一時金が数千万円に上ることも。月額使用料は20万円~40万円以上が相場。
- 介護保険の適用可否
- 不可。介護サービスの提供もなし。
- 医療保険の適用可否
- 不可。医療・看護関連のサービスもなし。
サービス付高齢者向け住宅
最近注目を集めているのが、マンションのように独立した住居で暮らすことができ、安否確認や生活相談などを受けられる「サ高住」(サービス付き高齢者向け住宅)です。
必要に応じて介護サービスや食事提供サービスも受けられるため、個人のライフスタイルに合った暮らしをカスタマイズできる点が魅力です。
- 特徴
-
- 自立できる高齢者(60歳以上)~軽度の要介護者向け。介護サービスは提供していません
- 要介護度3くらいまでが入居対象。認知症も軽度の場合のみというところが多い。専門的な介護を受けられるケースもあります(後述)。
- 建物全体がバリアフリーで、資格を持った相談員が勤務。病院への送迎や買い物の代行などのサービスは受けられる。
- 費用
-
基本的に賃貸形式。
入居一時金・月額使用料ともに施設ごとにまちまち。
- 介護保険の適用可否
-
「特定施設」と認められている施設に限り、介護専門のスタッフが常駐し、介護保険の適用も受けられます。
「特定施設」でないサ高住(サービス付高齢者向け住宅)で介護保険サービスを受けたい場合は、外部の業者に依頼します。
- 医療保険の適用可否
- 不可。
グループホーム
- 特徴
-
- 軽度の認知症高齢者(介護保険の、第1号被保険者)向けの施設。
- 入居対象は要支援2から要介護5までの高齢者に対応しています。
- あくまでも高齢者の自立を促す施設で、家事等は分担制。
介護ケアの他、リハビリ等の指導を受けることが可能。 - 体調が悪化してかなりの医療・かなりの介護が必要になると、原則、入居を続けられない。
- 費用
- 月額使用料は数万円から30万円ほど。入居一時金が必要な施設も多数。
- 介護保険の適用可否
- 可。
- 医療保険の適用可否
- 不可。
特別養護老人ホーム
- 特徴
-
- 要介護3以上の認定を受けた高齢者のためにある、公的施設。要介護度1~2の場合は、自治体から特別な許可を受ける必要がある。
- 日常の生活支援に加え、本格的な介護サービスを受けられる。認知症の受け入れにも積極的。
- 看護師は、夜間は滞在しない。このため、日常的な医療が必須になると入居NGとなる可能性がある。
- 費用
- 月額使用料は10~15万円前後が相場。入居一時金・保証金等は発生しない。
- 公的な施設のため費用がリーズナブルな点が強み。その分人気が高く、待機者が多い。
- 介護保険の適用可否
- 可。
- 医療保険の適用可否
- 基本的には不可。外部の業者に介護サービスを依頼し、医師が必要だと判断・同意書を発行した場合に限り適用できる。
介護老人保健施設
- 特徴
-
- 要介護1以上の65歳以上の高齢者向け。ただし、特定疾病に罹患しているなら65歳未満でも入居の可能性あり。認知症発症者の受け入れにも積極的。
- 長期的な入居を前提とした施設ではない。
退院後すぐに在宅生活に復帰できない状態の高齢者が、数ヶ月程度滞在することが一般的。3ヶ月おきに、状態に応じて入居・退去の判定がされる。 - 入居中は、リハビリ指導をや医療サービスを受けることができる。
- 費用
- 月額利用料は数万円~15万円ほど。入居一時金・保証金は基本的になし。
- 介護保険の適用可否
- 可。
- 医療保険の適用可否
- 不可。
介護療養型医療施設
- 特徴
-
- 専門的な医療サービスを必要とする、要介護1以上の高齢者を収容する施設。認知症発症者にも広く門戸を開く。
- 入居者の体調が悪化したからといって、それだけで退去を要求されることはない。ただし体調が順調に回復したら退去を求められる可能性は高くなる。
- 医師や看護師が常勤しており、本格的な医療やリハビリ指導が提供される。 とはいえ、伝染病等の疾患を患っていたり、長期的な入院が必須の状態だったりすると入居を断られることがある。
- 費用
- 月々の使用料はの相場は10万円弱から20万円ほど。入居一時金や保証料はなし。
- 介護保険の適用可否
- 可。
- 医療保険の適用可否
- 不可。
ケアハウス
- 特徴
-
- 要介護3くらいまでの60歳以上の高齢者(夫婦は片方が60歳以上ならOK)を対象。
- 「一般(自立)型」「介護型」の2種類がある
一般(自立)型 介護サービスなし。
介護を受けたい場合は、外部の事業者に別途依頼する必要。介護型 介護サービス付き。要介護1以上でないと入居不可。
-
- 自宅での単身生活に不安を覚えていたり、家族の協力を受けられなかったりといった事情を持つ高齢者によく利用される傾向がある。
- 費用
- 自治体の援助があるため、月額使用料は安め。数万円~20万円の間がほとんど。
- 入居一時金・保証金は数十万円程度(介護型の場合は、100万円を超えることも)。
- 介護保険の適用可否
- 可。
- 医療保険の適用可否
- 不可。
養護老人ホーム
- 特徴
-
- 自立できる状態の、65歳以上の高齢者向けの施設。ただし要介護1以上の認定を受けていると入居できない。
- 「深刻な疾患はないものの、経済的な理由や家族の事情のために行政・他人の助けがないと生活していけない」といった事情の高齢者によく利用される。受け入れには自治体の審査が必要。
- 介護施設ではないため、受けられるサービスは生活支援が中心。 専門的な介護が必要になると、退去を要請されることがある。
- 費用
- 生活困窮者に対応している施設のため、かなりの低価格帯。 入居一時金や保証金は原則なし。 月額使用料は高くても10万円くらい。
- 介護保険の適用可否
- 不可。
- 医療保険の適用可否
- 不可。
要介護度の違いにより入居可能な老人ホーム・介護施設
自立・要支援・要介護で入居できる介護施設は違いがある
介護施設選びをする際に問題になるのが、要介護度によって入居できる介護施設が変わってくることです。
毎日の生活で排せつ・入浴・食事・着替え・移動など、どのシーンで介助が必要になるのかは入居者それぞれに少しずつ異なります。
必要となる介護、受けたい介護が入居先で対応できなければ、施設、入居者それぞれミスマッチになるので、施設では入居要件に介護度を設定しています。
公的介護施設では、介護度の要件がはっきりと定められている一方で、民間の運営する有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などでは、入居可能な介護度も運営会社によって幅があります。
自立した高齢者向けに作られたサービス付き高齢者向け住宅でも、在宅介護サービスを利用することで要介護の方でも住み続けられる場合が多々あります。
介護付有料老人ホームでも、受入れられる高齢者の要介護度は軽度のみのところから、重度でも受入れ可能なところまでさまざまです。
ご自身が入居可能な施設はどんな施設?
数多くある選択肢の中から、必要なケアが安心して受けられる介護施設選びをするために、ここでは要介護度別に入居可能な老人ホーム・介護施設について整理しておきましょう。
老人ホーム・介護施設と言っても、「介護付有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「グループホーム」「特別養護老人ホーム」などさまざまな種類があります。それぞれ、入居可能な要介護度について異なります。
下記の表にまとめた通り、特別養護老人ホームなどの公的介護施設では、入居可能とされる介護度が高い傾向にあります。
逆に言えば、介護度の高い方を受入れることができる施設、という見方もできます。
このように、ご自身・ご家族の介護度と照らし合わせて、どんな施設が入居先として候補にあるのかを知っておくことは、介護施設選びをスムーズにすることにも繋がります。
自立 | 要支援1 | 要支援2 | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 | |
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介護付有料老人ホーム | ||||||||
住宅型有料老人ホーム | ||||||||
サービス付き高齢者向け住宅 | ||||||||
グループホーム | ||||||||
軽費老人ホーム・ケアハウス | ||||||||
介護型ケアハウス | ||||||||
特別養護老人ホーム | ||||||||
老人保健施設 | ||||||||
介護療養型医療施設 |
※△は施設の入居条件によって異なる
要支援1~2の人が入居できる老人ホーム・介護施設
介護付有料老人ホーム | ホームによって異なるので確認を |
---|---|
住宅型有料老人ホーム | 在宅系介護サービスを利用 |
サービス付き高齢者向け住宅 | |
グループホーム | 要支援2以上 認知症高齢者でない場合は不可 |
軽費老人ホーム・ケアハウス | 所得の低い人から優先 |
比較的介護度の低い要支援1~要支援2の方が入居できる介護施設にはどのようなところがあるのでしょうか?介護保険制度において、「要支援」と認定されるのは「今のところ介護の必要はないけれど、将来的に要介護状態になる可能性がある」と見なされた方で、介護予防のための支援を受けることができます。
要支援1・要支援2の人が入居できる老人ホームや介護施設としては「住宅型有料老人ホーム」「介護付有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」「高齢者向け住宅」「軽費老人ホーム・ケアハウス」などがあります。
ただし、要支援認定を受けていても、認知症の場合、入居できない施設もあるので、認知症の方やご家族の方は、検討している老人ホームや介護施設が認知症に対応しているかどうかを別途確認してみましょう。
要支援認定を受けている方が受けられるサービスは介護予防サービスとなりますので、将来できるだけ介護度が上がらないような日々のサポートが行われているかどうかも大切なチェックポイントとなります。
要介護1~2の人が入居できる老人ホーム・介護施設
介護付有料老人ホーム | ホームによって異なるので確認を |
---|---|
住宅型有料老人ホーム | 在宅系介護サービスを利用 |
サービス付き高齢者向け住宅 | |
グループホーム | 認知症高齢者でない場合は不可 |
軽費老人ホーム・ケアハウス | 所得の低い人から優先 |
介護型ケアハウス | |
老人保健施設 | 医療管理下での介護・看護、 回復期のリハビリで在宅復帰を目指す |
「立ち上がりや歩行が不安定、排せつ・入浴などで部分的介助が必要」とされる要介護1や、「立ち上がりや歩行などが自力では困難、排せつ・入浴などで部分または全介助が必要」とされる要介護2の認定を受けている方が入居できる老人ホーム・介護施設は意外と多くあります。
要介護認定を受けたことをきっかけに、老人ホームなどへの入居を検討される方もいらっしゃるかもしれませんが、比較的軽い介護度である要介護1~2の方は重介護の方と比べて選択肢が広くなります。
ただし、これまで要介護1から入所可能だった特別養護老人ホームが、制度改正により2015年度から「要介護3」以上に限定され、要介護1・2の方は入所できなくなっていますので、注意しましょう。
要介護3~5の人が入居できる老人ホーム・介護施設
介護付有料老人ホーム | ホームによって異なるので確認を |
---|---|
グループホーム | 認知症高齢者でない場合は不可 |
介護型ケアハウス | 所得の低い人から優先 |
特別養護老人ホーム | |
老人保健施設 | 在宅復帰を目指したケア |
介護療養型医療施設 | 特別養護老人ホームよりも重介護者対象 回復した場合は退居を求められる場合もある |
要介護3以上の、いわゆる介護度の重い方は、入所する施設が必要とする介護ケアをしっかりと提供してくれるかどうかを見極めることが、安心して暮らせるかどうかの大切な分かれ道となります。
介護度の重い方は、医療ケアも同時に必要とする方が多いので、介護だけでなく医療ケアの充実度も大切な見極めポイントとなります。
介護付有料老人ホームや特別養護老人ホームなどでは、重介護の方でも入居できるような介護・医療ケア体制を整えていますので安心です。
その一方でグループホームなどでは寝たきりや常時医療処置が必要な場合には対応できないといったケースもあるので、しっかりと確認しておきましょう。
また、入居時は介護度が低い状態で入所しても、年齢を重ね身体機能や認知機能の低下、病気などにより介護度が高くなる可能性もあります。
入居時は大丈夫でも、いざ入居した後に介護度が上がってしまったとき、そのまま住み続けられる体制となっているかどうかを考えておかなければ、「ずっと住み続けられると思っていたのに、退居を求められた…」などという事態になりかねません。
見学や説明を聞く際には将来のこともよく考えて、対応できる介護度やケア内容について質問し、疑問点のないようにしておきましょう。
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