話す側の取捨選択
私たちが、なにかをたずねるとき、
たとえば道を尋ねるとき、聞いていることは、道についてです。
そのまんまです。
しかし、自分のことを話すとき、聞いているように見えても、
道を尋ねるように率直に聞くことはありません。
ときには真逆の意味で聞いている場合もあります。
「では、来週行ったらいいんですね」と聞かれたら、
実際には、会話を打ち切るためだったというような場合があります。
話し手が本当のことを言ってるとは限らないのは、本音を話しにくい場合です。
本音を話すとどう思われるか分からないという不安があると、率直さは消えます。
この場合に、聴く側は、真意を知る努力が必要になります。
そんな場合、聴き手が話し手の思いをあたかも自分の経験であるかのように理解する、無条件に受け入れ尊重する聴き手自身のあり方がとても大切になります。
聴き手のあり方で、話す側が率直にもなるし、心を閉ざす場合もあるからです。
なのでAさんに話したことと、Bさんに話したことが違うということが起こります。
Aさんには本音を話しても大丈夫だと思ったが、Bさんには嫌われると思ったというようなことが起こります。
しかし、話す側の選択なので、それが正しかったかどうかは必ずしも正解だと言えません。
傾聴で大事なこと
傾聴で大事なことがあります。
聴き手が自分のニーズや痛みを手放すことが大切です。
「自分は価値のない人間だ。有能であることを証明して価値を持たなければならない。」というものです。」というニーズです。もちろん本人は無意識です。
自分のニーズや痛みを解消するために、相手に接していたら知らず知らず批判的な言動をとってしまいます。
しかし当事者(聴き手)は自分が個人的なニーズを満たすためにしているとは気づきません。
理屈では判っていても、実感として判っている人は稀で、話す内容が表層的になる傾向があります。
- 話し手の気持ちを理解する
- 理解したことを言葉で伝える技術
- 聴き手が相手に信頼する
いまのまま尊重されることを話す人は求めています。
聴き手から直そう、変えようとされることなく、理解され受け入れられ、無条件に尊重されることを求めています。
本音を語りつくせば協調的で社会的で成長の意欲に満ちた自分が現れて成長を始めます。
それを可能にするには、話す人(部下や悩み苦しむ人)を支えようとする人が、まずカウンセリングを受けて、自分自身をよく知っておくことが大切です。しかし多くの場合、そこまでやっている余裕がないという方が大半だと思います。
そこで「そういう状態の事実がある」と認識して、謙虚な気持ちを忘れず対処することが重要です。
話す側から見える聴き手の態度
これを話す側(部下や悩み苦しむ人)からすると、どう見えているのか説明しておきます。
無条件に受け入れられることが信頼の絶対条件ですが、えてして「問題を抱えている人」は、過去に無条件で受け入れられた経験が乏しく懐疑的になっています。
そのため歪んだ考え方、意見が多く、率直なコミュニケーションが難しい傾向があります。
このため聴く側が我慢を強いられることが多く、面倒に感じて、支配的になりがちで「変えよう」「直そう」とする態度が滲み出ます。
話す側に、その傾向が見えてしまうと、「やっぱり」と思ってしまいます。
話し手の気持ち
話し手は、無条件で受け入れて欲しがっています。
価値観と本音は違うことも知っています。
なんとか成長軌道に乗りたいと思っています。
なので、「あなたが良くなってもらわないと自分は困る」という態度を出さないでください。もし出てしまうと話し手の負担になってしまうからです。助けてもらいたい側が助ける側に回ることになりプレッシャーを感じてコミュニケーションは成立しなくなるからです。
このプレッシャーを言語化することが難しいので実際には「話しないならない」と感じて終わりになってしまいます。
結論だけを見ると難易度が高いようですが、実態はシンプルです。
話し手は、無条件で受け入れて欲しがっています。
価値観と本音は違うことも知っています。
なんとか成長軌道に乗りたいと思っています。
実は聴く側も同じなのです。
「自分のことを分かってくれていない」
両方が
- 無条件で受け入れて欲しがっています。
- 価値観と本音は違うことも知っています。
- なんとか成長軌道に乗りたいと思っています。
と思っていると、強い立場の者が弱い立場の者を相手を変えようとします。しかも自分が強い立場に立とうとするので、ますます複雑になります。
傾聴は、これをストップします。
聴く側(立場的に強い側)が聴くことで相手に本音を認識させてあげるのです。
これによって本人は、成長軌道に乗りたい気持ちを知ることができます。
傾聴しない人は、これを相手に押し付けてしまいます。
押し付けないようにするにはどうしたらいいのでしょう?
よくあるケースでは、問題が発生してから傾聴しょうとしますが、時すでに遅しになっています。
普段かまってくれない夫に離婚すると言ったら急に態度を変えたというのと同じことなのです。
「自分のことを分かってくれていない」というようにならないように、日常的に傾聴する習慣を通して本音と価値観のズレを修正する繰り返しが大切なのです。
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