高野山金剛峰寺真言宗 空海
真言宗は「弘法にも筆の誤り」とことわざにもなっている筆の達人、空海(弘法大師)が開いた宗派です。
真言宗は真言密教とも言い、護摩壇で護摩木を焚くことで知られています。
時代劇で怪しい僧侶が呪いをかける場面でよくみる光景です。
密教の修行をすれば、誰でもただちに仏になることができる「即身成仏」の教えが密教の特長です。「即身成仏」とは、この世に生きている間に仏になれるというもの。
つまり極楽に行かなくても現世で仏になれるというもの。その理由は人は仏性を持っているが、普段は煩悩に苛まれ忘れている。
なので自分の仏性を自覚し、三密行(三密加持)を行えば、仏性が現れて悟りの境地に達するというものです。
三密行(三密加持)とは煩悩の源である三業(一つの場合も、三つの場合もある)を受け入れて、煩悩に潜んでいる真理を追究すれば、正しく用いることも可能になり悟りに通じるという教えです。
成し遂げることはとても難しいことですが、リアリストだと見ることもできます。
つまり悟りをひらくという目的をもって現実を肯定的に生きるなら、煩悩の導きによってでも真理に到達すると説いていらっしゃるように思います。
「三密」は、「身密(しんみつ)」「口密(くみつ)」「意密(いみつ)」を指します。
具体的に言うと、以下のようになります。
- 身体=楽をしたい、美味しいものを食べたい、異性と交わりたい
- 口=悪口や陰口、自慢話、噂話
- 意識(心)=バレなければ何をしてもいいと思う心、ズルをしようと思う心
密教では、「どんな人間も、本質は大日如来の一部であり、その本質に到達すれば大日如来と一体になれる」と説いています。
「大日如来」とは「釈尊(お釈迦さま)」のことで、現世の現れたのが「釈尊(お釈迦さま)」、極楽浄土にいらっしゃるのが「大日如来」と言う意味になります。
密教とは、口伝(公にされていない教え)で、その逆が顕教。顕教は書物(言葉や文字で公になっている)が主体です。その顕著な事例が男女の愛欲ではないでしょうか。
すすめているわけではありませんが、自然であり清浄なものとしています。
つまり自分の小さな欲望も自分のあり方で大きな力に発展させられるというのです。とてもリアリストですね。
さらに、空海の真言密教には、空海の後から出てくる天国、地獄の概念もありません。
香川県で豪族の子として生まれた空海は中国三教(仏教・道教・儒教)を学びますが、もっとも優れているのは仏教だと判断し、仏教に打ち込みます。
804年、空海、31歳のとき、唐に行き恵果和尚に入門します。
恵果和尚は1000人を超える弟子がいましたが、空海に会うなり、「私はあなたを待っていた。
すぐに密教の奥義を教えましょう」と言ったそうです。
乾いた砂が水を吸い込むように学んだ空海は恵果和尚のすすめもあり、一刻早く日本に帰ることを決心します。
それにしてもなぜ空海は恵果和尚に会う以前に唐で有名になっていたのでしょう。
中国語、梵語をまたたく間にマスターしたことに周囲の僧侶が驚いていたからです。
特に梵語は密教をマスターする上で欠かせませんでした。
帰国した空海は、20年の留学の約束を1年で帰国したため九州で罰を受けます。
持ち帰った200点からの経典、法具などを書き出した「御請来目録(ごしょうらいもくろく)」を差し出します。
これを見た最澄が密教を学びたいたために京都に呼び交流が始まります。
やがて最澄とまったく立場が逆転します。
書の達人だった嵯峨天皇に重用されて、高野山に金剛峰寺を建立し、真言宗を開きます。
空海の際立った特長は、土木事業や漁などで実利的な効果を発揮したことです。
そのせいで天皇や貴族たちに支持されるだけではなく民衆からの人気も評判が高かったのです。
数多くの伝説が生まれていますが、その能力を真言密教の恩恵にしました。
その後、真言宗は分化、多くの派が生まれています。
ご本尊は大日如来、主な経典は大日経、金剛頂経。「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」と唱えます。
現在に通じる法事を確立したのが真言宗です。
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