社会人基礎力③|「考え抜く力」を育てる3つの能力要素

システム思考とは円相 ゲンキポリタン大学
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働き方、生き方が多様化していくプロセスにある現代にあって、経産省が2006年に打ち出した「人生100時代の社会人基礎力」(=3つの能力/12の能力要素)は2020年代に入り、ますます重要性を増しています。しかもウイルスという課題が覆い被さり、働き方も生産力もバリエーションを広げています。いかに会社思いか、経営者思いか、まじめにやっているかが評価の尺度になっていた中小零細企業でも、ヒトは弱みでなく強みで生産性をあげるのだと真摯な見直しを迫られています。

では強みとはなにか。3つの能力/12の能力要素に探ってみます。

  • 前に出る力
  • 考え抜く力
  • チームで働く力

3つの力を打ち出しましたが、考え抜く力

「考え抜く力(シンキング)」の能力要素

考え抜く力(参考:社会人基礎力 – 経済産業省

考える力の能力要素は、①課題発見力計画力創造力の3つの要素です。

  • 課題発見力:現状を分析し目的や課題を明らかにする力
  • 計画力:課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力
  • 創造力:新しい価値を生み出す力

円相

禅に「円相」という言葉があります。図形の丸を一筆で描いたもの。悟りや真理、仏性、宇宙全体などを円形で象徴的に表現したものとされるが、その解釈は見る人に任されます。

私は矛盾がないことを表したものと解釈しています。たとえば考えて考えて矛盾がない状態に達したとしたらそれでヨシですが、どこかに矛盾が生じれば間違いがあるということ。間違いを正さないときれいな円相になりません。どこから入っても矛盾がなければ整合性がとれているということで良いのです。

課題発見力

課題発見力は、「現状を分析し目的や課題を明らかにする力」と定義されています。

日常の業務が滞りない状態であったしても、「現状よりさらに改善できることはないか」と主体的、自律的に新たな課題を見つけ出す力が課題発見力です。

そもそも「問題」を大別すると3種類あります。

①発生型:すでに表面化していて、明確に見えている問題。

②設定型:自ら目標設定し、達成する上で発生する問題。

③潜在型:まだ表面化していないけれど、これから発生する可能性がある問題。

このうち、難易度の高い問題は、まだ表面化していない潜在、潜伏型のこれから発生する可能性の高い問題である③潜在型です。

つまり常日頃から問題意識の高いヒトは、いまは問題になっていないが放置していると、問題Aと問題Bが結びついて新たな問題Xが起こる可能性があると予測して事前に対策Zを敷くことをします。


これはその個人ならではの才能による対策ですが、ここでいう課題発見力は個人の才能だけに委ねるのではなく、これから発生する可能性の高い問題を発見する仕組みをチームとして育むことを学び学習する態勢を敷くことも含めます。つまりフリーランサーからチームまでひとりでも多くのヒトにスキルアップを拡大します。その実現には3つのステップを活用します。

方法①:思い込みを捨て「ゼロベース思考」を持つ

よく私たちは、行き詰まったときに、ゼロベースで考えようと言いませんか?
ゼロベース思考とは、今までに持っている前提の知識や思い込みを一旦「0(ゼロ)」にし、基礎ベースがない状態から物事を考えることです。

ヒトは、何かを考えるときはゼロから考えるのではなく、自分の経験を生かして簡略化、ショートカットして、自分の知識や経験、価値観などに基づいて物事をとらえてしまう癖が一般化しています。

テクノロジーの変化が激しく、ビジネスでも根本のルール自体がひっくり返されることが多々起こる現代では、反対に、振り出しに戻って考えるゼロベース思考は重要視されている能力の1つです。

ゼロベース思考は、3つの力から構成されます。

1.前提を疑う力

私たちは、2つのオプションを提示されると、ついその2つの中から選択してしまいます。「そもそもこれ以外のオプションがあるのではないか?」と考えるのが、前提を疑う力です。

2.目的に戻る力

目的に戻る力は、とても重要です。あれこれと考えたり、議論をしていると、いつの間にか本来の課題、論点からずれてしまうことがあります。本来の目的を押さえ続ける力も必要となります。意識しないと目的を忘れてしまうことが少なくありません。

3.森を見る力

議論していると細部にこだわりだし、木を見て森を見ずの状態に陥ることが少なくありません。神は細部に宿るという言葉がありますが、森を見続けているから可能であって、今どこの話をしているのかを全体構造で考え、それぞれの要素とのつながりを意識して捉え続けていることで実現できるのです。枝にこだわりすぎて森をみなくなれば不可能になります。
ゼロベース思考の注意点は、ゼロに引っくり返すだけではダメだということなのです。代替案まで出してこそ、価値があるので、全体を繰り返し考えることが大切です。

方法②:前提を疑う「クリティカルシンキング」を身につける

前提を疑う力を鍛えるには、自身の「思考の癖」に気づくことがポイントとなります。思考の癖を改善するには、意識的に自分の考えを批判的に思考してみる<クリティカルシンキング(=批判的思考)>が有効です。クリティカルシンキングを鍛えることで、主観や先入観に捕らわれずに物事を見る力が養われていきます。

クリティカルシンキングの王といえばお釈迦様ではないでしょうか?
お釈迦様は、最期を迎えるに当たって弟子たちに遺言ともいうべき『自灯明・法灯明』を遺されています。そこでは、私すら信じるなと、自らを否定されています。

ブッダに学ぶシステム思考「自灯明、法灯明」
「自灯明、法灯明」はお釈迦様の遺言とも言うべき重要な言葉です。 この言葉の意味を理解すれば「仏教」が宗教ではなく、哲学さらに心理学であると思うでしょう。 自灯明、法灯明 ただ誰かから聞いたからといって、それを信じるな。 何代も受け継がれたか

「考え抜く」ために「思考法」の習得を

考え抜く力

どれも日常的に必要な要素ですが、どれが重視されるかは担当する業務によって異なります。例えば、営業職の場合は、新規開拓や既存顧客の維持のために「計画力」の早期習得が期待されますが、企画業務であれば、ユニークなアイデアを生み出す「創造力」がより重要になるはずです。

考え抜く、すなわち“最後までとことん”考えるためのポイントは、思考法の習得です。「思考法」と一口に言ってもさまざまなものがありますが、企業の教育研修でよく取り上げられるのは、先に説明した「クリティカルシンキング」「ゼロベース思考」以外に「ロジカルシンキング」や「ラテラルシンキング」です。

ロジカルシンキングは、問題を整理し、筋道を立てて合理的に考える「論理的思考」です。物事を構成する要素を分解していく「ロジックツリー」や、ある物事に関連する要素を漏れなく挙げて検討する「MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)」といった手法が用いられます。

論理を縦方向に深く掘り下げる「垂直」思考のロジカルシンキングに対して、ラテラルシンキングは、固定観念にとらわれずに、自由に発想を拡げる「水平」の思考法で、いつでもどこでも、必要なときに創造性が発揮できる発想法です。

創造力」は意識をせず身につけることは難しいため、ぜひ習得したい能力です。

既成概念の枠のなかで既成概念に間違いはないかを考えるのが、先に説明したクリティカルシンキングといえるでしょう。一方、既成概念の枠から外れて考えるラテラルシンキングではこれまでの慣習や既成概念にとらわれないことが重要ですが、クリティカルシンキングは疑うことから始める点が大きな違いです。

社会人基礎力|ロジカル・シンキング(logical thinking)
「社会人基礎力」は基礎であるから、特別な才能を必要とすることでもありません。誰でも仕事をしていると「どうすればいいんだろう」という思いが頭をよぎることが頻繁にあるはず。自分の立場で実証する方法を組み立て、あきらめずに、ロジカル・シンキングを鍛えながらやり続けることで、考え抜く力は磨かれます。

計画力

計画力
「社会人基礎力」3つの能力のひとつ「考え抜く力」の能力要素のひとつである「計画力」は、そもそもなぜ能力要素として重要なのでしょうか? 

課題を発見できても解決の手順が考えられなければ、効率よく解決できないからです。計画力がないと、最善の方法が分からないばかりか、期限までに解決できない可能性があるということです。

つまり計画力には二つあるといえます。

計画力の一つは、期限までに終えられるように計画することです。
仕事は必ず期限があるので、課題を確実に解決しつつも、決められた日までに終える必要があります。仕事の質をキープしながら短期間で完了できるように計画を立てる力が、計画力です。

計画力のもう一つは、課題を解決するための手順や方法を選択できるように、複数発見して、あるいは考えて、より最善かつ最適なものを選ぶことです。
これができれば、複数の方法があった場合に比較検討して、より良い方法を見つけることが可能になるだけでなく、もっとも重要なことですが、不測の事態に対応できます。ひとつしか用意できなくて散々な目にあった経験をされた方は少なくないと思います。

計画力を身につける方法

では、どうすれば計画力が身につくのでしょう。
日常生活にヒントが山盛りです。その秘訣は「逆算」です。どんな些細なことでも手順を考えることです。具体的には、完成のイメージから逆にたどってスタート地点に到達することで、自然に手順が考えられるので、可能な限り「逆算」の練習してみることです。

計画力で注意すべき点は、計画することで満足してしまうと不用意によるトラブルが発生します。良い計画ができたことで、それで満足してしまう人が多くいますが、準備不足が原因です。

良い計画とは、準備と表裏一体です。最終的に計画を実行するのは人間であることを無視した計画は実行不可能に陥ります。つまり、無理なく実行できる計画は訓練あって可能になります。

たとえば同じ計画であってもA店舗、B店舗、C店舗の3箇所で実行しても同じ結果にはなりません。なぜでしょう?実行するするヒトが違うからです。すなわちそれぞれに思い込みがあって、決めつけが阻害するのです。そこで同じ基調に載せようと悪戦苦闘がはじまることは少なくないのです。つまりそこまで「逆算」して計画しておく必要があるということです。そうするといかに「準備」が大切かと理解していただけると思います。

創造力

ヤロン・ヘルマン/創造力

創造力とは、ゼロベース思考に似ているところがあり、過去の発想ややり方などにとらわれず、新しいものを作り出すスキルをさしています。 また、創造力はリスキリング(学び直し)とも結ぶついていて、一から新しいものを作るだけでなく、既存のアイデアに知恵や工夫を施したり、組み合わせたりして形を変え、さらに高い成果を生むことも創造力のひとつです。

創造力を語る有名なエピソードのひとつに、ジャズ・ピアニストのヤロン・ヘルマン氏の言葉と物語があります。

 
「創造力を活かして表現することは、誰にでもできる」
とジャズ・ピアニストのヤロン・ヘルマン氏は断言します。
ヘルマン氏は、16歳のときにプロのバスケットボール選手の夢を大ケガで断念せざるをえなくなり、ピアノを始めました。それから3年後、米の名門ジュリアード音楽院に合格し、今では一流のジャズ・ピアニストとしてパリを中心に活躍しています。
イスラエル出身のジャズピアニスト、ヤロン・ヘルマンが綴った著書『創造力は眠っているだけだ』(プレジデント社)は、そんな思いにそっと手を差し伸べてくれる一冊です。

創造力のコツ①ベイビー・ステップ

創造力は眠っているだけだ。

ヤロン・ヘルマンがピアノを習い始めたのは16歳。一般的には遅すぎる年齢、かつ、ゼロからのスタート。本人も周囲も、まさか彼がプロになるとは考えもしなかったという。そんなヤロン少年をいつの間にか現在の道へと導いていたのは、彼が「ベイビー・ステップ」と呼ぶものの積み重ねだった。

「歩き始めたばかりの赤ちゃんを見ると、『歩くこと』への純真な決意に心を打たれます」とヤロン・ヘルマンは語る。

つかまり立ちし、小さな片足をもう片足の前に出し、そして……転ぶ。あまりにもぎこちない試みだが、脇目もふらず何度も立ち上がる中で、いつしか子どもは歩けるようになっている。一歩、また一歩。よちよち歩きで踏み出すその表情は実に嬉しそうだ。

「生まれて間もない赤ちゃんにとって、失敗しても失うものはほとんどありません。この姿勢こそが、恐るべき効果を生むのです初心者であることを楽しみ、小さな歩みを全身全霊で味わうこと。それが「ベイビー・ステップ」のコツだという。

創造力のコツ②視点の変化

ヤロン・ヘルマン

ヤロン・ヘルマンにピアノを教えたオファー・ブレイエルは、生徒ひとりひとりの個性を尊重する教育者だった。その教育メソッドに基づき、ヤロン・ヘルマンも劣等感や失敗への向き合い方を見出し、自らの中に眠る「宝」を発見したという。

著書『創造力は眠っているだけだ』では「ミッション」と題し、日常生活の中でクリエイティブな視点を養うトレーニングを紹介している。

また、彼は恩師との対話を通して学ぶ喜びも知ったと語る。師匠であるオファー・ブレイエルのレッスン室には、『荘子』、オイゲン・ヘリゲルの『弓と禅』、ウスペンスキーの『第四の道』など、古今東西の書物がいつもさりげなく(しかし、明らかに目につく場所に……)置かれていたそうだ。
博学の恩師の言葉は、ヤロン・ヘルマンの中に多分野への好奇心を呼び起こした。プレイフルで開拓心旺盛なその姿勢は、彼の作曲や演奏にも反映されている。

創造力のコツ③「創造力」はすべての人に備わっている

ヤロン・ヘルマン

ヤロン・ヘルマンは「創造力」を次のように定義します。

  • 「才能」とは異なる力。
  • 自分の内面を表現する力。
  • 何歳になっても磨くことのできる力。
  • すべての人に備わっている力。

「創造力」は天賦の才能ではなく、個々人の奥底を流れる地下水のようなものだとヤロン・ヘルマンは語る。著書『創造力は眠っているだけだ』では、彼のこれまでの実体験を交えながら、「創造力」を解き放つための実践的なヒントを多数紹介している。レコーディングやパフォーマンスにまつわる秘話のほか、ブラッド・メルドーなど、名ミュージシャンたちとの交流エピソードも必読です。

「弓と禅」が教える考え抜くこと

力を抜いた<考え抜く力>を『弓と禅』の著者ドイツ人の哲学者オイゲン・ヘリゲルに学んでみます。
「日本の文化を勉強したい」と選んだ弓道。その師範が、弓聖と呼ばれる高名な禅僧、阿波研造でした。『弓と禅』は、阿波研造さんとドイツ人哲学者オイゲン・ヘリゲルの魂の交流ドキュメントで戦前から読み継がれています。

ヘリゲルは弓を一生懸命練習しますが深く考えず「当たれば良いんだろう」ぐらいに考えています。読者も仰天しますが、なんと師範は「力を抜け」「力を抜け」と身体中の力を全部抜けと言わんばかりに注文します。ヘリゲルは不思議に思い「そんなに抜いたら射ることができない。誰が射るのか」と問います。その回答に読者であれば狂喜乱舞します。
それが射る


それ」がなにか想像できないヘリゲル。
疑問をぶつけると「今晩来なさい」と言われて、夜の道場に行く。
師範は電気を全部消して、28メートル離れている的の前にローソクを1つだけ灯します。
真ん中に黒い点があるもののはっきりと見えない中で、師範が弓を2本射ると、1射目が的のど真ん中に命中します。2射目は最初に弾いた一本目の矢の尻を貫きます。

「これはとても人間技じゃない」とヘリゲルは思って聞くと、師範は「矢を自らの意志で放すな。それが放すまで待て」と言います。もう、なにがどうなっているのか、わからなくなりますよね。
自分とは違う大きな力が、この弓を引かせていると感じます。

以後、ヘリゲルは夢中で練習を重ね・・・・そしてある日、師範にこう伝えます。
「今日、それが降りてきました。」

一つを極めた者だけに芽生える哲学が自然と溶け合い、想像できない世界に導いてくれるのです。

力と戦ってはならない、
力を使いこなしなさい。
必ず、天が味方してくれる。
 何事も挑戦と失敗の繰り返しがあってこそ、身につくものだ。 人間はあやまちからしか学ぶことができない
(バックミンスター・フラー)

1933年からやってきた未来のクルマ

同じような光景を目にしたことがあります。禅僧が一本の綱に乗ったかと思うと、歩いていくのです。「なぜ、できるようになったのか、わからないができるようになった」と言います。

「とことんやり抜いた」力ですね。
ヒトは神様ではありませんが、最上級のところまで近づく努力をすることによって、ヒトとして想像できないレベルに到達できるのです。禅に『放下著』という言葉があります。一切を捨てるという意味です。

まとめ

  • バックミンスター・フラー
  • オイゲン・ヘリゲル
  • ユング
  • 立花隆

の言葉を拾ってみましょう。

バックミンスター・フラー
宇宙船地球号のバックミンスター・フラーは次のように語ってます。

力と戦ってはならない、
力を使いこなしなさい。
必ず、天が味方してくれる。
 何事も挑戦と失敗の繰り返しがあってこそ、身につくものだ。 人間はあやまちからしか学ぶことができない
(バックミンスター・フラー)

オイゲン・ヘリゲル
未来を引き寄せるために、肩の力を抜いて。考え抜く。使いこなし術は、『弓と禅』の著者ドイツ人哲学者オイゲン・ヘリゲルは師範から、もっと力を抜けと指導されて「そんなに抜いたら射ることができない。誰が射るのか」と問いました。その回答に「それが射る」と回答され、「それ」の意味がわからずにいたら、夜。部屋に来なさいと促され信じられない光景を目にします。

ユング
力を抜いて繰り返し繰り返しトレーニングすれば、シンクロニシティ(集合体無意識)のエネルギーを得ることができません。

立花隆
竹藪というのは、竹一本一本は地下茎で実は繋がっていて、竹がある山はそれが1つの生命でもある。同様に人間の知的な営みや知識の体系も繋がっている。
立花さんはそれを「いのち連環体」と呼び、限りある命が支えあってるとした上で、それが続いていくことを「いのち連続体」と呼んでいました。

この考えはバックミンスター・フラーの力を抜いて、やってやってやり抜けば力を使いこなせば必ず、天が味方してくれる」という言葉の根拠になっているように思います、

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