禅語「遍界不曽蔵」に学ぶ「生活禅/典座教訓」

生活禅/典座教訓 ゲンキポリタン大学
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禅語「遍界不曽蔵」(へんかいかつてかくさず)』とは、世界は常にまったく明らかである、うまくいっている。「遍界不曽蔵」は、世界を信頼し、安心を得るための禅語です。

花が一生懸命花をやっているように、月も木々もそれぞれに何も隠さずにやっていると捉えて、自分自身を隠さず、ただひたすらトリチウム以外の放射性物質を、安全基準を満たすまで浄化した水をひたすら清い水にしたらなら、放射能から私たちを守るためにひたすら戦った水に「ありがとう」と手を振って大海に戻せば良いのです。

「汚染水」「処理水」という呼び名は人間が勝手につけたことです。禅語には愛がいっぱいの智慧が詰まっています。同じく禅の行いには愛が溢れています。雲水たちが雲水の心身を思い食事を用意する、そこにはウェルビーイングの真髄がぎっしりつまっています。

道元禅師の『典座教訓』

曹洞宗 の開祖、道元禅師は、禅の核心を伝えようと『典座教訓』を著されました。典座教訓

典座教訓について

『典座教訓』は嘉禎3年(1237)春、道元禅師が三十八歳の時、興聖寶林寺で学んだこと、特に典座の役職について教え示されたものです。

『典座教訓』の最後には「時に嘉禎三年丁酉春、記して後來學道の君子に示す。觀音導利興聖寶林禪寺住持傳法沙門、道元記す。」と書かれています。

この『典座教訓』は古来の各写本に依っては所々に違いがあります。又、全文が漢文であり、その師家によって微妙な読み方の違いがありますが、重要なのは生活のすべてが禅であり、すべてに『典座教訓』の教えが宿っていることです。

まず朝の掃除にはじまり、朝食を用意すること、いただくことのすべてが決まった習慣であり、決めたことを決めたようにすることで、生活が磨かれ、自身が磨かれることです。何事も自分でやらないと心底理解ができなくなります。

道元、入宋す

臨安

道元さまが真実の仏法を求めて入宋(中国留学)されたのは、貞応二年(1223)南宋の嘉定十六年、道元さまが24歳の年でした。

当時北宋が衰え、都を長安から臨安に移した時代でした。

道元さまは博多の港を出帆し、一路南支那海を横断して、明州を目指したのは三月下旬のことでした。当時は航海といっても命がけであり、まさに風まかせ、運を天に任せてのものでした。

明州/寧波

明州/寧波(めいしゅう/ニンポーし)

幸い十数日で明州/寧波(めいしゅう/ニンポーし)に到着することができました。しかし、道元さまには天童山への上山が授戒(出家)の問題と安居中という時期の問題等で許可が下りず、やむなく船中にとどまることになります。

五月のある日の夕方、道元さまがとどめおかれたその船に、禅宗五山の一つ阿育王山で食事を司る役目の僧が訪ねてまいりました。

この役目のことを典座と申します。この僧は60歳程であり、当時としてはかなりの老人でありました。阿育王山はそこから20km程のところにありました。

阿育王寺

阿育王寺(アショーカおうじ)

出会いこそ、いのちと申しますが、この老典座和尚との出会いが道元さまをして仏典、祖録などによる理論理屈による仏教を学ぶことが第一との自己の今までの考え方から、実践の仏法への転機となり、後に典座教訓を説かしめることへの大きな縁になりました。
そこでこの出会いの様子を少し紹介いたしましょう。

仏教は哲学

道元さまの船を訪れたその老典座は四川省の生まれで、郷里を離れて四十年、昨年阿育王山の典座職を命じられたとのことでありました。時は五月ある日、明日は節目の日に当たるという日でした。

老典座は明日山内の雲水達に麺汁を作って供養しようと考え、その汁のだしとして日本産の椹(桑の実か椎茸か)を使うため、この船に買いだしにやってきたということであります。

道元さまは船中の生活が長く、ましてや中国の僧侶に会うなどまれなことであり、よい機会と考え、この老僧に中国仏教について何かと尋ねました。茶をすすめ会話がはずむうち時は夕刻もせまり、老僧は「再見」を告げて立ち去ろうといたします。

道元さまは老僧を引き留め、宿泊をすすめます。
さらに道元さまは「あなた様ほどのお方が肝心な坐禅修行や経典を読むなどせずに、煩わしい典座職などなさり、また自らこのようにお働きになるのですか」とお尋ねになりました。

するとその老典座は大笑して「外国からきたお坊さん、あなたはまだ弁道修行の何たるかを知りません。文字の何たるかも知りません。」といわれました。道元さまはこの時、老典座の言われたことの本当の意味が理解できず、

  • 「如何なるか是れ文字」(文字とは何ですか)
  • 「如何なるか是れ弁道」(修行とは何ですか)

と問い直されました。

これに対し老典座は

「今あなたが質問されたことをうっかり見過ごしたりしなければ、何時か文字の何たるかを知り、弁道の何たるかを理解されるでしょう」

もし理解できなければ阿育王山を訪ねてください。」と言い残して立ち去られたのであります。

天童山景徳寺

天童山景徳寺

この出会いが以後の道元さまにとって大変な影響を与えることになります。
後日阿育王山の典座職を退かれた彼の老僧が故郷四川省への帰途、道元さまが修行されていた天童山景徳寺へ立ち寄られました。
再会を喜んだ道元さまは再び例の船上での質問を繰り返されました。

「如何なるか是れ文字」
「一二三四五」
「如何なるか是れ弁道」
「偏界曽て蔵さず」

道元さまは老僧の答を聞き文字の本当の意味、弁道修行の本当の意味を理解できたのです。
経を読み、坐禅をすることだけが仏道修行と考えていた己の狭い了見を反省するのでありました。

この「一二三四五」とは文字は表面上は一つ一つ意味を持っているのであり、それは個々が独自性を有し、他に置き換えできない絶対的なものであるということであります。

しかし、文字というものは所詮月をゆびさす「指」に他ならず、月こそ覚りであるということであります。

また「偏界曽て蔵さず」とは真実はつつみ隠さず、ありのままの姿でこの世界に現れている。無我、空の姿です。

偏界曽て蔵さず

粥

弁道修行とはこの大自然の道理に従った生きざまの実践です。
人間とは本当に特殊な生命です。
心をダイナミックに変化させて善行もできます。
神々ですら善業を重なるためにあえて人間に転生してくる。
善をなすことができる特殊な生命、それが人間です。
仏道修行をして成長できるのも人間です。

そこに人間だけがブッダにもなれるロジックがあり、可能性があります。
この人間の時代にできるだけ善行をして、仏道修行をすることが大切であり、そこに周活・週活・終活の本来があります。

食は愛です。愛とはひたすら繰り返す習慣であり、それゆえ創意工夫に他なりません。創意工夫になる道筋に愛がロマンになります。
従って食事を作ることも坐禅と同じく悟りの大切な弁道修行(仏道修行に精進すること)なのです。

「偏界曽て蔵さず」という言葉の中に私たちが如何に生きるべきかということを教えているのです。

ウェルビーイングにとまどう経営

ウェルビーイング

7割以上の経営者が、「ウェルビーイング(Well-being)」の重要性を実感しており、「ウェルビーイング(Well-being)」への取り組み理由として、69.9%が「従業員が働きやすい環境を作るのは当然だから」と回答しました。他にも、「良い人材の確保のため」や「生産性の向上にも貢献すると思う」などの理由も挙がりました。

声が高まるなか、すでに63.1%の企業で「ウェルビーイング(Well-being)」への取り組みを実施していることが明らかになっています。

そんななか、一方では、「ウェルビーイング(Well-being)」への取り組みができていない企業では「自社に合う取り組みがわからない」が39.5%で最多、次いで「ウェルビーイング(Well-being)を実現する具体的なサービスがわからない」が28.9%あると報告されています。

「自社に合う取り組みがわからない」と答えた企業は言葉と知識で迷路に入ってしまったようです。これが道元禅師が、阿育王山の老僧から言われた「外国からきたお坊さん、あなたはまだ弁道修行の何たるかを知りません。文字の何たるかも知りません。」なのです。
遮二無二に読書をすると知識は増えますが幸福感は増加するわけではなく、かえって何をどう行動したらいいのかわからない迷路に入り込みます。

道元禅師でさえ、経を読み、坐禅をすることだけが仏道修行と考えていた己の狭い了見を反省しました。

みなさん、言葉に振り回されているのは、「ウェルビーイング(Well-being)」の本質がいまひとつ理解できていないことです。つまり頭で考えるから難しくなりロマンとして熟成しないのです。重要だと分かっているものの実施できていないといった課題があります。しかし、大丈夫、身体を通して学ぶとすぐに答えが返ってきます。

まとめ/典座教訓

「空(くう)」あるいは「無我」という言葉に首をかしげるあなたの機転に、人間だけがブッダにもなれるロジックがあり、可能性があります。
この人間の時代にできるだけ善行をして、仏道修行をすること、そこに周活・週活・終活
すなわち般若の智慧があります。

毎日決めたことを決めたように実践する。なりきるために一切、余計なものを持ち込まない。雲水のように、起きて半畳寝て一畳。全てを身体ひとつに納めるマインドフルネス(なりきる)の智慧を心がけましょう。刹那生起を全力で生きるウェルビーイングの心地よさを大切にしたいものです。

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